みなさん こんにちは、文房具屋のおやじ、ノボタンです。
みなさんの机の上や引き出しの中に「吸い取り紙」は有りますか?
万年筆をお使いの方ならブロッター(吸い取り器)に付けた吸い取り紙をお使いかも知れません。
日本では、ボールペンが未だ今のように普及していなかった頃は、帳簿などに記帳するのは付けペンやガラスペンが一般的でした。
私の生家は文房具屋で、店にはペン軸、ペン先、ガラスペン、そして吸い取り紙、ブロッター、それに腕カバーを売っていたのを、子どもの頃の記憶として、うっすらと残っています。
(腕カバーは、乾かないインクがワイシャツなどの腕の部分に付くのを防ぐ為のカバーです
また、ガラスペンと言っても、今のようなお洒落なのでは無く、竹軸にガラスで出来たペンを挿した物です。
ガラスペンの元祖、佐瀬工業の竹軸のガラスペンのような物です。)
そして、その付けペンで書いた帳簿の上をブロッターでゴロンと転がして、直ぐには乾かない余分のインキを吸い取るのに当たり前のように使っていました。
今日はそんなレトロでもあり、現在需要が増えている「 吸い取り紙 」についてのお話しです。
吸い取り紙、いつから?
吸い取り紙というのはハンコを押したり万年筆で書いた余分のインクを吸い取る紙で、紙そのままでも使えますが、ブロッター(吸い取り器)に付けて使います。
吸い取り紙は19世紀にイギリスが始まりのようで、日本では1872年(明治5年)にインクが輸入されてから使用が始まったようです。
インクの「吸い取り紙」としてはそのようですが、日本では昔から「印」を押す時に使う朱肉や印泥は有るので、吸い取り紙のような物は使っていたのでは?と個人的には思うのですが…
ただ、和紙は墨も朱肉も吸い取りが良いので、使う必要が無かったのかも?と思ったりもします。
その頃の吸い取り紙は原料として木材パルプでは無く、赤色に染めたボロ布で作った物が多く、また脱色技術が十分で無かった為、薄赤色をしていたそうです。
吸い取り紙の特長
吸い取り紙は普通の紙と違い、インクを吸うと元の紙にインクは移りません。
ここでインクが移ったら、何の為の吸い取り紙か分かりませんよね。
吸い取り紙の原料は木綿ぼろ、化学パルプ、砕木パルプを使います。
そしてサイジング(紙のにじみを防ぐ作業など)は施さず、多孔性が有り、かつ紙特有の親水性もあるため、とても良く水を吸収します。
吸い取り紙・ブロッターの使い方
吸い取り紙はそのままでも使えますが、ブロッタ―という器具に付けて使います。
初めて聞いたり見た人は、ブロッターって何する物?と思うかも知れません。
特に木のブロッターを初めて見る人は「黒板消し」?って思うかもです。
もしかしたら文具店に行って「ブロッター下さい」と言っても分からない店員さんがいるかも知れません。
吸い取り紙の付け方は、木のブロッターは、取っ手をくるくるとねじって本体を緩めます。
そして吸い取り紙を曲面に合わせて、それぞれの紙の端を織り込んでセットします。
プラスチックのブロッターは曲面の片側を内側に曲げて外します。
そこへ吸い取り紙を挟んで完了です。
使い方は、インクで書いた物や、ハンコを押して未だ乾いていない紙面にゴロンと転がすだけです。
また、裏面もそれほど汚れて無ければ使えます。
ブロッタ―の種類
ブロッタ―を作っているメーカーは数少ないです。
日本の「コレクト」というメーカーには木製とプラスチック製の物が有ります。
海外製では、アンティークなフランスのエルバン、イタリアのボルトレッティの製品が有ります。
どちらもとても雰囲気のいい製品ですが、サイズは小さめです。
吸い取り紙の種類
コレクト、コクヨ、クォバディスジャパン、ライフなどの製品が有ります。
コレクト、コクヨの製品は、主にブロッターに取り付けて使うサイズになっています。
また、ノーブルノートなどでおなじみの紙製品メーカー「ライフ」社からは「スイトリシオリ」が販売されています。
栞(しおり)代わりにもなるスリップタイプ495円(税込)、シートタイプ550円(税込)が有ります。
私が居る店でも、以前に比べて吸い取り紙が良く売れるようになっています。
ガラスペンが人気商品になり、今まで万年筆インクを出していなかった文具メーカーや海外メーカーもどんどん新製品、新色を出してきています。
それと共に「インク沼」という言葉があるように、インクの魅力に「はまる」人が増えています。
パイロット「カクノ」のように、1100円(税込)という手頃な価格で高い品質の万年筆が発売され、万年筆を使う方が増えてきているのも関係してきているのかも知れません。
それと共に、これからはもっと吸い取り紙、ブロッターが売れるようになってくるかもしれません。
文房具屋のおやじとしては、嬉しいことです。
万年筆インクで書いた紙の上にブロッターを転がす、いいものですよ。
最後までお読みいただき、どうも有難うございました。
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