万年筆初心者に送る 文具屋が教える選び方ガイド!

みなさん こんにちは、文具屋のおやじ、ノボタンです。

私はブログ『楽しい文具BOX』で色々な事を書いていますが、その中でも特に多くの方が読んで下さっていますのが【万年筆】について書いている記事です。

ここ何年か、私がいる店でも万年筆を使ってみたい、と言うお客様がとても増えてきています。

それは一つには、ここ最近(?)のインクブームが万年筆への興味を引き出しているのでは、と思います。

また、私が住んでる和歌山県はペン習字がとても盛ん、と言う事もその理由のひとつだと思います。

小学生の書写は鉛筆で書いていたのが、中学生になると万年筆で書くようになる為、買いに来られる、と言うパターンです。

 

そこで今日は初めて万年筆を使ってみたいと思われている方や、現在お使いの方に、改めて万年筆についてお話しさせていただきます。

万年筆の特徴、その魅力

万年筆はボールペン、シャープペンシル、またその他の筆記具と比べると違いが沢山あります。

万年筆は買った最初はインクは入っていません。

インクボトルから吸い上げるか、カートリッジインクをペン本体に挿し込むとインクが出て来て初めて書けるようになります。

万年筆は強い筆圧をかけなくても、ペン先を軽く紙に当てるだけで、滑らかに書くことが出来ます。

これは毛細管現象と言う働きで、ペンの内部に入っているインクが細い管を通ってペン先までインクが導き出されるからです。

 

万年筆はペン先に弾力があり、使う人の筆圧や書き方によって、文字に個性が現れます。

また、何年も使い込むほどにペン先が少しづつ摩耗し(摩耗、というほど減りませんが)、使う方になじんだ書き味を楽しむことが出来ます。

それは万年筆の大きな魅力です。

ペン先の太さは万年筆によって超極細、極細、細、中細、中、太、極太、また縦線と横線の太さが違うもの、またそれ以外にも様々な太さ、柔らかさが選べます。

万年筆の構造

万年筆の構造は、一番肝心なペン先、ペン芯、胴軸、キャップからなっています。

ペン先

ペン先には合金製やステンレスが使われています。

金ペン

一番多い14金、そして18金、またセーラー万年筆には21金と言うのもあります。

純金は24金なので14金というのは金の含有率が58,5%、また18金は75%、そして21金は87,5%

です。

金の含有率が多くなると、紙へのタッチが柔らかくなります。

また、金は酸に強く、インクによる腐食に耐えるため、長期間の使用に適しています。

ただ、ペンの書き味、その書いた時の感触と言うのは人それぞれ違っていて、例えば21金のペン先よりも14金のペン先の方が書き易い、好きだ、と言う方もいらっしゃいます。

21金ペン、セーラープロフィット21

14金ペン、プラチナセンチュリー 3776

ペン先 ステンレス

一般的にステンレスのペン先は金ペンに比べるとタッチは硬めで、弾力性は乏しいのですが、中にはこれ金ペン?と思うほど柔らかいタッチの物も有ります。

そしてコストパフォーマンスに優れていますし、初めて万年筆を使う方にとってはステンレスの硬めのペン先の方が使いやすい、と言われる方もいらっしゃいます。

 

万年筆と言うのはボールペンなどと違い、繊細な感触を得られるもので、そこがまた万年筆の魅力でもあるのです。

ペン芯

ペン芯というのはペン先の裏側にあるペン先を支えている樹脂の小さな部品です。

これは万年筆の心臓部とも言える部品で、インクタンクに入っているインクをペン先まで導き、インクの流量などを適切に保つ大切なものです。

ペン芯にはインクを溜めておくクシ溝の他に、インクタンクへ空気を取り入れる空気溝が有ります。

万年筆が書けるのは、本体・同軸に入ってるインクが毛細管現象により、ペン芯を通ってペン先に導き出されます。

そして同時に使ったインクの容積と同じ容量の空気を送り込まなければスムーズにインクは出てきません。

 

インクの吸入方式

・吸入式

万年筆本体にインクタンクとピストン機構が備わっていて、ボトルインクからインクを吸い上げ ます。

・カートリッジ式

使いきりの小さいインクタンク(カートリッジ)をペン先の反対側に挿し込んで使います。

携帯に便利で、手間が少なく使えます。

カートリッジはそれぞれメーカーに合った物があり、別のメーカーの物では使えません。

但し、外国のメーカーの万年筆や、雑誌の付録に付いている万年筆などは互換性が有る物も有ります(ペリカン社製の短いカートリッジが使える万年筆も多いです)。

・両用式

カートリッジを挿しても使えますが、コンバータと呼ばれる吸入器を取り付けてボトルインクから

インクを吸い上げて使う事も出来ます。

コンバータもメーカーそれぞれの物があります。

ペン先の太さ

ボールペンやシャープペンシルには芯の太さの種類が有りますが、万年筆にも太さの種類が有ります(万年筆によってある物、無い物があります)
極細字(プラチナ万年筆には超極細字と言うのも有ります)、細字、中細字、中字、太字、極太字など。その他にもミュージックやズーム、などメーカー、シリーズによって色々有ります。
また、同じ太さのペン先でも少し柔らかめの「軟」というのも有ります。「細字・軟」や「中字・軟」など

ではどんなペン先を選べばいいのでしょうか?

極細字(EF)  手帳、ノートなど、細かい字を書くのに適しています。
 また「線は細い方けど、字が美しく見える」と言う理由で、ぺン習字をされている女性がよく選ばれています。
細字(F)   最もスタンダードで、普通の筆記に適しています。
    便箋に手紙などを書くのに適しています。
 初めて万年筆を使ってペン習字をされる学生さんに、おすすめします。
中字(M)       初めて万年筆を使う方にお薦めします。
 しっかりと書け、どんな用途にも向いています。
太字(B)       手紙や葉書の表書き、また契約書やサインをするのに適しています。
ミュージック(MS)ズーム
 書いた時の縦線と横線の太さが違い、音符を書いたり、西洋書道・カリグラフィ
 を書くのに適しています。
・その他   毛筆のような文字を書けるペン先(パイロット万年筆・フォルカンなど)、
 メーカー、シリーズによって様々なペン先があり、それを選ぶのも万年筆の面白さ、楽しさです。

インクの種類

万年筆のインクには、主に次の3種類あります
1. 染料インク
   一番一般的なインクです。
 水に溶けやすく、色の種類もとても沢山有ります。
 水に溶けやすいので、書いた文字がにじみやすく、時間が経つと色あせする可能性があります。
 一般的な筆記に適したインクです。
2. 顔料インク
 色は鮮やかで耐水性、耐光性に優れ、公的な長期保存が必要な文書に適しています。
 カラーバリエーションは少なく、染料インクに比べるとペン先が詰まりやすいという欠点がある ので、こまめなメンテ ナンスが必要です。
 パイロットの証券用インキ、製図用インキ、セーラー万年筆の極黒(きわぐろ)、青墨、蒼墨、
 プラチナ万年筆のカーボンインク、ピグメントインクなどがあります。

3. 古典インク(没食子インク もっしょくしインク)
 過去には万年筆用インクとして多く使われていました。
 古典インクには鉄分が含まれている為、耐光性・耐水性に優れ、長期保存に適しています。
 時間の経過とともに当初書いた時の色味が黒色に変化し、その風合いを楽しむことが出来ます。
 ただ、この鉄分の影響で万年筆内部で腐食を起こしてしまう恐れがあるので、こまめなメンテナ
 ンスが必要です。
  ステンレスペン先の万年筆に使うのは避けて下さい。


20年くらい前までは、インクの色と言うと、ブラック、ブルー、ブルーブラック、レッドくらいでした。
しかし今やインクブームと言う言葉が良く聞かれ、『インク沼にはまる』方が増えているようです。
このブームの先駆けとなったのは、神戸市のナガサワ文具センターが2007年に発売した【Kobeインク物語】です。

今や日本でも今まで万年筆インクを出していなかった文具メーカーが、どんどん新製品を出していますし、世界の多くのメーカーの物を合わせると、物凄い数のインクが世に出ています。


以上、万年筆に関して一通りのことは書きましたが、この他にも書いていますので、そちらも
お読みいただければ嬉しいです。
   『楽しい文具BOX』 https://yamachanbungu .com
 終わり
 最後までお読みいただき、有難うございました。

 こんにちは、文房具屋のおやじ ノボタンこと、山路 昇です。

 生家は和歌山市の商店街の文房具店。 そこの三男として生まれ、育ちました。
  団塊の世代です。
 
 物心がついた頃、周りは文房具に囲まれていました。

 大学を出て東京で5年間レストランの会社でサラリーマン生活を経た後、和歌山に戻り、色々な経験を経て、現在も百貨店の文具売り場で日々お客様と接しています。
 
 この46年間、文具の仕事に携わってきた知識と経験を通して見た色々な事、文具の紹介などを書き連ねて行こうと思っています。

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