前回の記事では、「水性顔料インク」がどのように進化し、
にじみにくく、色あせに強いインクとして注目されているのかをご紹介しました。
その流れで今回は、
**私たちが毎日のように使っている“ゲルインクボールペン”**に焦点を当ててみたいと思います。
「なめらか」「発色がいい」「黒が濃い」
そんな当たり前になった書き味の裏側には、
顔料インクの粒子技術の大きな進化がありました。
ゲルインクとは何か?
ゲルインクボールペンは、
水性インクに顔料を使い、さらに“ゲル状”にしたインクを採用したボールペンです。
油性ボールペンのような粘りはなく、
水性ボールペンのようにさらさらしすぎない。
この「ちょうどいい粘度」が、
・なめらかな書き出し
・インク切れの少なさ
・文字のくっきり感
を生み出しています。
誕生の背景|「もっと書きやすくしたい」
1990年代以前、ボールペンは
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油性=丈夫だけど重たい書き味
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水性=軽いがにじみやすい
という、どちらかを選ぶ時代でした。
「もっと軽く、もっときれいに書けるボールペンは作れないか」
その答えとして生まれたのが、
顔料+水性+ゲル化という発想だったのです。
顔料インク最大の課題は「粒子」
顔料インクは、
水に溶けるのではなく、細かな粒子が分散している状態です。
ところが、ここに大きな問題がありました。
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粒子が大きいとペン先で詰まる
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粒子が沈殿すると色ムラが出る
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粘度を上げすぎると書けなくなる
つまり、
「どれだけ粒子を小さく、均一に保てるか」
これがゲルインク開発の核心だったのです。
技術革新|超微粒子化というブレークスルー
そこで各メーカーが取り組んだのが、
顔料粒子の超微粒子化技術です。
粒子を限界まで小さくし、
しかも均一なサイズにそろえることで、
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ペン先で詰まらない
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インクが安定して流れる
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紙の表面にしっかり定着する
という理想的な状態が実現しました。
この技術があったからこそ、
今のゲルインクボールペンの書き味があるのです。
ゲルインクが支持された理由
ゲルインクボールペンが一気に広まった理由は、実にシンプルです。
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軽い力でスラスラ書ける
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黒がはっきり、濃く見える
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ノートや手帳がきれいに仕上がる
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耐水性があり、にじみにくい
特に学生さんや手帳ユーザーから、
「書くのが楽しくなるペン」として支持されました。
代表的なゲルインクボールペン
現在では、各社が独自の粒子技術を磨き上げ、
個性豊かなゲルインクを展開しています。
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**パイロット**の「ジュース」
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**三菱鉛筆**の「ユニボール シグノ」
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**ゼブラ**の「サラサ」
それぞれ
「なめらかさ」「発色」「速乾性」などに違いがあり、
選ぶ楽しさもゲルインクならではです。
文具屋の現場から見ても
売り場に立っていて感じるのは、
ゲルインクボールペンを一度使った方は、
ほとんど油性に戻らないということです。
「文字がきれいに見える」
「ノートを見返すのが楽しい」
こうした“書いた後の満足感”が、
ゲルインクの一番の強みだと感じます。
次に来る進化は?
最近では、
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さらに速乾性を高めたゲルインク
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書類保存を意識した高耐久顔料
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環境配慮型インク
など、新しい動きも出てきています。
顔料粒子技術は、
これからも静かに、しかし確実に進化を続けていくでしょう。
まとめ|ゲルインクは「技術の結晶」
ゲルインクボールペンは、
ただ「書きやすいペン」ではありません。
顔料インクの粒子を極限までコントロールする
高度な技術の結晶です。
何気なく使っている1本のペンにも、
これだけの工夫と進化が詰まっている。
そう思うと、
今日の一文字が少し愛おしく感じられませんか?
文具屋のおやじ ノボタンです。
文具の仕事に携わって47年。
現在も百貨店の文具売り場に立ちながら、
万年筆・鉛筆・筆ペンなど、
文具の楽しさと選び方を発信しています。
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