みなさん こんにちは、文具屋のおやじ、ノボタンです。
2024年のNHK大河ドラマ『光る君へ』が幕を閉じました。
このドラマ、視聴率はさほど高く無かったようですが、平安時代の文化や紫式部の生き方を深く描いた内容でした。
私も毎週楽しみに観ていて、その魅力を今も余韻として感じています。
今回は、『光る君へ』の中で印象的に描かれていた「まひろ(紫式部)」の執筆シーンを通じて、源氏物語を支えた文房四宝(筆、墨、紙、硯)に注目し、その背景を掘り下げてみたいと思います。
紫式部と源氏物語
平安時代中期、日本文学史に燦然と輝く『源氏物語』は、紫式部によって書かれました。
この物語は光源氏を主人公に、彼の出生から死後まで70年以上にわたる人間模様を描いた全54帖、約100万字にも及ぶ長編小説です。
759首もの和歌が織り込まれ、500人以上の人物が登場する壮大な物語は、平安時代の宮廷文化を象徴する作品として今も愛されています。
『光る君へ』では、まひろ(紫式部)が宮中に女房(朝廷で高貴な人々に仕えて身の回りの世話などに従事する女官)として入り、藤原道長の長女である藤原彰子(ふじわらのしょうし)の教育係として仕えている時に、道長から彰子を元気付ける為に読み物を書くように命ぜられて、と言う風になっていました。
劇中では彼女の執筆風景が美しく再現され、その背景には文房四宝と呼ばれる文具が欠かせませんでした。
文房四宝とは?
文房四宝とは、書道や執筆に欠かせない「筆(ひつ)、墨(ぼく)、紙(し)、硯(けん」の4つの道具を指します。
これらは書斎で使われる基本的な文房具であり、特に中国から日本に伝わった唐文化の象徴でもあります。
紫式部が『源氏物語』を書く際にも、これらの道具が大いに活躍しました。
ドラマでもこれらの道具を用いた執筆シーンが描かれており、私が居る店でも普段からこのような商品を扱っているので、いつもどんな物を使って書くのか、とても興味深くじっと見つめていました。
1 筆
筆はもともと中国で作られていましたが、弘法大師が唐から帰ってその製造方法を伝えてから日本でも沢山製造されるようになりました。
『光る君へ』では、吉高由里子さん演じる紫式部が繊細な筆使いで物語を書いていました。
彼女が使用していた筆は、仮名書き用の細く長い毛筆で、イタチやウサギの毛が使われていたと推測されます。
ちなみに、吉高由里子さんは左利きながら、ドラマのために右手での筆記を猛練習されたそうです。そのプロ意識には驚かされました。
「弘法筆を選ばず」と言う言葉があります。
これは弘法大師のような筆の達人であれば、筆の良し悪しは関係無く、どんな筆でも傑作が書ける、と言う諺ですが、実際には弘法大師は筆にはとても拘って選んでいたとか。
2. 墨
墨は執筆に欠かせない道具です。
平安時代の日本では、主に赤松を燃やした煤(すす)から作る「松煙墨」が使われていましたが、紫式部の時代には宋から胡麻油などを燃やして作る「油煙墨」が入り、より濃く美しい文字が書けるようになりました。
固形墨は硯で磨る時間や方法によって、文字の濃淡を調整できるのも特徴です。
3、 紙
紫式部が執筆に使った紙は越前和紙でした。
劇中でもまひろのリクエストに応じ、藤原道長が紙を大量に贈るシーンがありましたが、平安時代には和紙は非常に貴重で、写経や文学活動に欠かせないものでした。
越前和紙は6世紀から製造され、平安時代には品質の高さで知られるようになりました。
現在も手漉きで作られる越前和紙は、その美しさと耐久性で国内外に高く評価されています。
4、硯(けん)
『光る君へ』の中で、紫式部が硯で墨を磨るシーンが印象的でした。
硯には墨を溜める部分(墨池)があり、劇中では濃い墨を使うための「鯉」、薄墨を使うための「牛」と彫られた硯が登場しました。
紫式部が愛用した硯は、主に中国・唐から伝わった端渓硯(たんけいけん)だったと考えられています。
この硯は平安時代の知識人たちにとって特別な存在であり、高品質な墨を磨るための道具として重宝されました。
源氏物語と文房四宝のつながり
紫式部が『源氏物語』を執筆できた背景には、文房四宝の存在が大きかったことが分かります。
硯で墨を磨り、筆を走らせ、越前和紙に物語を綴る――その一つ一つの工程が、今なお私たちの記憶に残る日本文学の傑作を生み出しました。
現代の文具に置き換えれば、万年筆やノートが相当するかもしれません。
けれども、手作業で行われた当時の執筆風景には、今では得られない趣があります。
和紙の魅力と現代文具への応用
日本の和紙は、洋紙にはない温もりと美しさがあります。
和紙を使った便箋に万年筆で手紙を書く――そんなひとときを楽しむのも素敵ですね。
私も越前和紙の里を訪れて、実際に紙漉きを体験してみたいと思っています。
みなさんもぜひ、和紙の魅力を感じてみてください。
紫式部と文房四宝、そして源氏物語が生まれた平安時代の文化。『光る君へ』をきっかけに、そんな歴史と文具の世界に触れてみるのも楽しいですね。
おわり
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